「日和、俺の話もう一度聞いてくれる?」


逃げずに聞かなきゃ。



「…はい」



私たちはリビングに向かった。



テーブルの椅子に向かい合わせで座る。

まだちゃんと覚悟出来ていないせいか、鈴原くんの顔をちゃんと見れない。



この前の話の続き…とかなのかな?


遠距離になるし、忙しくなるし…
やっぱり別れよう…なのかな。



ダメだ。
頭の中が【別れる】って言葉で埋め尽くされる。




「この前話した留学の事やけど…」

きたっ!!


「うん」


「日和はさ、俺が留学したら俺とはどうしたい?」



この質問はどういう意味だろう。。

鈴原くんから離れたいとは言いにくい…って事かな。



本当は私から別れようって言えたらいいんだよね。
そしたら鈴原くんは困らない。
夢に集中できる。



「わり…変な聞き方して…俺は」
「別れよっか」



素直な気持ちをぶつけるって思ったのに
裏腹な全く思ってない言葉を言ってしまった。



「は…?」


どこまでも良い格好がしたい自分に嫌気がさす。


「鈴原くん、ピアノに集中してほしいし!それにほら!そもそもは私を守ってくれる為に付き合うってなったんだし!」


ほら、私って良い彼女でしょ?
物分かり良いでしょ?


って、自分が自分に言ってるみたい。
でもね、口が止まらないの。


「だからね!よかったらお友達に戻れたら…」


あれ?

笑って、笑顔で言いたいのに涙が止まらない。



「本気で言ってるん?」


ほら、うんって言わなきゃ。

言って、私!



「う…」

泣いているせいか、うまく話せない。


違うか。


思ってもないから言いたくないんだよね。

もうどうしたら…





鈴原くんが私の前に来てくれた。


「抱きしめさせて」



ぎゅっと抱きしめてくれる。

いつもより力が強いせいか、少し苦しいぐらい。



「そんな事言わせてごめん。悩ませてごめん。泣かせてほんまにごめん!」


「自惚れかもやけど、俺の事考えてくれて…やんな?」


もう…限界だ。



私は小さく頷いた。