「日和、聞いてほしい事があるねん」


??なんだろ??


「うん?どうしたの??」


「俺さ、ほんまに日和が好きやねん」


ドキッ!!!!

何いきなり!?


ドクドクドクドク!!!
鼓動がすごい速さで加速していく。


「鈴原くん…?」

なるべく冷静を装わねば!



「だから、信じて聞いて欲しい」


私を見る鈴原くんの目が、すごく真剣で吸い込まれそう。

だけど、なんだろう。
最近の私は勘が冴えてるのかな。

直感で思った。

きっと、ちょっと悲しい話かもって。



「来年か高校卒業に合わせて留学しようと思ってるねん」


ドクンッ


「あっ…そうなんだ!留学とかすごいね!」


「いきなりでごめん。まだ確定でもなんでもなくて、俺の目標というか夢というか…」


夢。


鈴原くんの夢。



「怪我する前に一度縁があってフランスにいる先生にレッスンを見てもらった事があってさ。その先生にこっちに来ないかって言ってもらえててさ」


そうなんだ。
鈴原くん、すごい。。


「夏さ、一緒にいる時に母さんから電話あった時あったの覚えてる?あん時父さんも長期出張から帰ってきてて家族でその話し合いとかしててん」


そうだったんだ。


「俺のわがままでごめん。日和と離れるなんて考えられへんねんけど…チャレンジしたい気持ちもあって…」


私の事、考えてくれたんだ。

それだけで嬉しい。


「…日和?」

何も言わない私に不安そうな顔で覗き込む鈴原くん。



応援したい。
大好きな鈴原くんのピアノを応援したい。


応援したい。
応援したい。
応援したい。


だけど…


「すごいよ!!鈴原くん!!私、応援してるからね!!」


私、ちゃんと笑えてるよね??

良い彼女、出来てるかな??


「日和、俺…」

「わぁー!鈴原くんの夢をなんかお祝いしたくなってきた!!」


「え?夢をお祝い…?」

「何かご馳走するよ!?何食べたい!?」


今はこれ以上この話は聞けないかも。

笑顔保てないかも。


留学?
どれぐらい?
早くていつから?


ねぇ

私とはこれからも一緒にいてくれるの?



全部聞きたいのに、1つも聞けない。


「あのさ日和、肝心な事がまだ言えてない…」

「あー!!!私、今日早く帰ってきてって門限言われてるんだった!!」


「門限!?まだ16時半やけど…」

「ひなちゃんがうるさくてさ。ごめんね!今日は帰ろっか」


あぁ。
私って最悪最低な彼女だ。


それからは何を話したか覚えてないぐらい頭がぼーっとしたまま、家に向かった。