少しの沈黙。



バイバイしたくないよ。



「じゃあ、またな」


行かないで。




「ねぇ!うち寄って行かない!?」



自分で自分が信じられない。


お家に誘っちゃった。




「今日お母さん、夜まで仕事の日で遅いの!もしよかったらお茶でもどう?ゆっくりしていって」


引き留めるために必死に理由を絞り出す。


断られるかもしれない不安のせいか、かなり早口になっちゃってる気がする。




「……いいの?」


まさかの返事。



「もちろん!!」


やったー!!
嬉しい!!!

まだ一緒にいれる!!




「どうぞ」


家のドアを開ける。




「おじゃまします」

鈴原くんのこういう律儀な所も好き。




私は先に靴を脱いで

「リビング来てね!お茶用意してくる」

リビングへ向かおうとした。




グイッ

腕を引っ張られて身体が後ろに倒れそうになった。



「ひゃっ」


ぎゅっ

鈴原くんに抱きしめられる。




ドキドキドキドキドキドキ



静かな家の中で、時計の針の音だけが響いている。

絶対私の心臓の音も爆音でバレてる。





「えっと…鈴原くん…?」


ぎゅう

抱きしめる力が強くなる。



「意味わかって言ってる?誘ってんの?」



「え!?誘う…?」

えっとまだ一緒にいたくて頑張って誘ったけど…



「…やっぱり迷惑だったかな…?」


ピアノの練習もあるもんね。
忙しいよね。


「ごめんね…」




「はぁー…」


ため息が聞こえた。


もう、、、私ってば自分の事ばかりで最悪。



「鈴原くん、本当にごめんな…」


顔を上げた瞬間、唇に何か触れた。