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「あの頃守ってやれなかったから…俺の勝手な独りよがりなんだ」


「なにそれ」


ずっと思ってた気持ち。

結局は日和をあの環境から救ってやれなかった自分をなんとか正当化したくて考えた独りよがりな気持ち。




「人には出来る事に限界があると思うねん。中学の頃の日向はその時に出来る限界の事をちゃんとしたと思うで」


そんな風に言ってもらったのは初めてだった。

そもそもこの話を、他人にした事がない。


だからか



「今は俺もいる。桜も加藤もいる。日向だけで抱えこまなくていいねん」


余計に鈴原さんの言葉ひとつひとつに救われる。



「おばさんも悩んでたしな。でも過去は変えられへん」


そう、過去は変えれない。



「だからこそ、今や今からを大切にしていけばいいんちゃう?日和も変わろうと頑張ってる」



ああ、この人は本気で日和の事…



「まぁ、こんな偉そうな事言ってるけど俺も相当落ちてたけど日和に救われたんよ」



「そうなんですか!?」



「そう。日和には言うなよ?」





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あの日の会話が頭をよぎる。



俺はこの人に敵わない。


鈴原さんの演奏を聴きながら、改めて思った。


日和、すげー素敵な彼氏が出来てよかったな。