「どんなに綺麗なものでも、たった一度の嫌な思い出で全てが嫌いに塗り替えられてしまうのよ」

真白は息を吐きながら、あの時のことを思い出す。あの頃、真白は大学生だった。

大学に入ってすぐ、真白はサークルの先輩と付き合うことになった。先輩からの強いアプローチに負け、サークルに入って一ヶ月もしないうちに恋人という関係を築いていた。

真白は甘えることが苦手だった。人に頼ったりするのが恥ずかしいと子どもの頃から思い、いつも一人で何でもこなしていた。恋人の先輩にもあまり連絡はせず、甘えることはほとんどなかった。そんな真白に、先輩の心は少しずつ離れていったのだろう。

冬のある日、先輩とデートの約束をした。デートの待ち合わせに先輩が駅前を指定し、真白は約束した時間より早めに駅前にいた。雪が降っていた。とても寒かった。しかし、真白はすぐに先輩が来ると思い、その場で待ち続けた。

先輩は何時間経っても来ることはなかった。寒い中待ち続けたせいで、真白は熱を出して大学を数日休んだ。そして風邪が治って大学に行くと、先輩から別れを告げられた。