紅茶の件があってから、真白は瀧と少しずつ話すようになっていった。冷たい言葉をかけてしまうことはあるものの、前よりも距離が近くなったことで、これまで知らなかった瀧のことを少しずつ知っていった。

瀧は姉と弟の三人兄弟で三重県出身。三重県はほとんど雪が降らず、降っても瀧の住んでいた市では積もることはほとんどないので雪に憧れがあるそうだ。

「今年は雪降るかなぁ」

白い息を吐きながら瀧が言う。雪という単語を聞くと、嫌でも真白の脳裏にはあの時のことが浮かび、俯いてしまう。

「雪なんて、全然いいものじゃないのよ」

「確かに、雪かきとか大変そうだもんね」

真白の言葉に瀧は笑ってそう返す。瀧がそんな言葉を返すのは当然だろう。雪にいい思い出がないのは、全て自分自身のせいなのだからーーー。

「氷室さんは雪が嫌いなの?」

見つめられ、真白の胸が跳ね上がる。街の光を映した瀧の瞳は、まるで宝石かと思うほどに美しい。慌てて目を逸らしながら真白は「嫌いよ」と吐き捨てるように言った。