手の中にあるコーヒーを見て、真白は息を吐く。コーヒーの苦味は苦手だ。しかし飲むしかないだろうと思い、蓋に指をかけたその時だった。

「氷室さん、どうしたの？」

聞き慣れた声に真白は顔を上げる。そこには瀧がいた。昨日、彼に酷い言葉を真白は浴びせたというのに、瀧は何もなかったかのように笑みを浮かべている。真白が何も言えずにいると、瀧は手の中にあるコーヒーを見て、「ああ」と頷いた。

「氷室さんがよかったらこっちも交換しない？俺、自販機でコーヒー買ったつもりが間違えてこっち買っちゃって」

そう恥ずかしそうに笑いながら、瀧はミルクティーの缶を差し出す。ミルクティーは真白の好きな飲み物だ。迷わず真白はコーヒーを差し出す。

「……ありがと。あと、昨日はごめん」

小さな声でお礼と謝罪を言うと、瀧は嬉しそうに「いいよ、別に」と言う。瀧の後ろでは大きな尻尾が揺れているように見えた。

「コーヒー飲みたかったから、ラッキー！」

そう言い、瀧は手を振って真白から離れていく。その後ろ姿を見ながら、真冬は思った。