デートの約束をしたあの日、先輩は真白と同じ学年で同じサークルの女子に助けを求められ、助けていたそうだ。そしてお礼をすると言われ、彼女の部屋に招かれたという。

素直に甘えてくる後輩と甘えられない彼女では、甘えられる後輩の方が可愛いと先輩は言い、真白から離れていった。その日から、真白は雪も冬も嫌いになったのだ。

「じゃあさ、もう一度塗り替えちゃおうよ」

真白がマイナスな感情に浸っていると、瀧が手を掴んできた。瀧の手は手袋をしていないというのに温かい。そのまま手を引かれ、真白は駅前まで連れて行かれる。

「これ……」

「綺麗でしょ?今日からやってるって知って、氷室さんと見に行こうって思ってたんだ!」

真白の目の前でイルミネーションが煌めいている。ハートのイルミネーションの前では、カップルらしき男女が写真を一緒に撮っていた。それを見ていた真白の顔に、冷たい何かが当たる。指で拭うと水滴がついた。

「何?」

「これ、雪だよ。初雪だ!」