前はここにいなかった、十時になった。
 去年までは、中学生だからいちゃダメって言われてたけど…今は良い。
 十時からは、花火が始まる。
 人気のないベンチに、二人で座る。
 ……花火、始まった。
 ードカーン、ヒュルルー。
 キレイな花火に、見惚れた。
 キレイ……。
 それよりもキレイで、私が好きな彼の隣にいることが、幸せだ。
「……沙優、言って良い?」
「ん?何を……?いいよ?」
 花火に照らされた彼の横顔は、本当にかっこいい。
 花火が後ろで絶え間なく打ち上げられる中……彼は口を開いた。
「……俺ら、別れよう」
 後ろで……キレイすぎる花火が、打ち上げられた。


 今、大学生の私は、あれから来ていなかった夏祭りに、久しぶりに来ている。
 あのりんご飴の屋台が見える。
 彼とは……もう接点はない。
 あれから、付き合った人はいない。
 私が、一番私が好きなのはー。

 ……これからも、ずっと、貴方だけだ。
  どうか……この願いが叶うなら……。

 ……もう一度、貴方の隣にいたい。