私達は、毎年夏祭りに行っている。
 そして、毎年りんご飴の屋台に寄っている。
『りんご飴一つ』
 彼は買ったりんご飴を、毎回私にくれた。
『え、大丈夫だよ、ってむぐっ』
 断ったら、りんご飴を口に無理矢理突っ込まれる。
『……っ⁉︎何⁉︎』
『食えよ、甘いの好きなんだろ』
 彼が屋台がない芝生に寝っ転がって、私が食べ終わるのを待つのがお決まりになっていた。
『りんご飴二つ』
 なぜか甘党になった彼も、りんご飴を食べたいと言っているようになった。
 二人でいつもの芝生で寝っ転がって、りんご飴を食べる。
 月日が流れて、いつの間にか私達は恋人になっていた。
 いつの間にか、私達は中学生を卒業しそうな年齢になっている。
「りんご飴一つ」
「……え?」
 まだ甘党なはずなのに、いらないの……?
 恋人だけど、幼なじみみたいな関係だった。
 先にカリカリッとかじってしまった彼に、私の分はないか……と諦める。
 ……って、え?
「食え」
「く、食えって……もう食べたでしょ?」
「別にいいだろ。恋人だし」
 恋人だし、って、もしかしてっ……!
 か、か、か、間接キスっ⁉︎
 恋人だからって……私達、まだハグ何回かしかしたことないよ⁉︎
 ファーストキスもまだ。
 なのに……⁉︎
「早く」
 ぐいっと押し付けられる。
「わ、わかったっ……」
 カリッと、彼が食べてなさそうなところを食べる。
 甘い……。
 彼はまたカリカリとかじって、私に渡す。
 ま、また間接キスっ……。
 なぜそんな平然とできるのっ……⁉︎
 勇気を出して、彼がかじったところをカリッと食べる。
 おいしい……。
 そんな感じで今年も終わる夏祭り。
 ……高校生になった今も、また来ている。
 今はもう、間接キスくらいであわあわしない。キスなんて、もう何回もした。
「ん」
 またりんご飴を押し付けられる。
 動揺せずに、食べる。
 いつまでも味が変わらない、このりんご飴と違って、この恋は、どこまでも色が変わっていく。