性格の悪い男の作品と思うと憎たらしいものだが、美しさの前でそんなものは霞んでしまう。

彫刻家としての腕を見せられ、ヴィタは盛り上がる気持ちをとめられない。

落ち込むどころか、正々堂々と向き合いたいと高ぶっていた。

気後れはない。

誰も見たことのない美しい彼を彫ったのだからと、あたたかい想いを胸に抱いていた。



(私、ルークを愛してる)

ーーだからあなたの本当の美しさを見て。



「続いてはヴィタ……令嬢?」


司会進行をつとめる男が名前の記載された紙を見て目を丸くした。

顔をあげ、名簿とヴィタを見比べ青ざめた。

女が出品していると驚く司会の動揺は伝染し、観客たちも疑問の声をあげる。


「なんで女が……」

「なんの間違いだ」

「女が彫刻とはなんと末恐ろしい」


ざわつく会場にヴィタは深呼吸をし、すたすたと大股に歩いて前へと出る。

女だからと指をさされるのは自分が最後だと言わんばかりにヴィタは強気を前面に出していた。


戸惑いが大きい中で司会は進行をとめるわけにはいかないと機転を回し、石像を覆う布を外すよう指示を出した。


「タイトル『愛されし光』」


ひらりと布が落ちると同時に曇り空が開いて、光が差し込んだ。

太陽の輝きをまとって現れた石像に人々は言葉が出てこない。

それは世界が一変してしまったかのような衝撃だった。

自分たちがこれまで信じてきたものは何だったのかと疑うほどに……尊ぶべきものだった。