普段は華やかな装飾の多いドレスを着ることが多いが、この場に自身を飾る必要はないと突っぱねる。

主役は彫刻。

男性しか名乗りをあげない品評会で、ヴィタは拳を握りしめ、顎を前に突き出して立っていた。


(大丈夫。あの美しさは誰もが認めるほかないわ)


それでも緊張で胃が縮む思いはある。


「おいおい、なんで女がいるんだぁ?」


追いつめるように同じ土俵に立つ男たちが詰め寄ってきた。


「ここは彫刻家の立つ場所だぞ」


嫌みを口にするは前回の品評会で最多票数を獲得し、審査員から絶賛された彫刻家の男だ。

ゆったりとしたチュニックとジャケット、脚のラインを強調するタイツ姿。

品評会で評価を得たことで、貴族と何ら変わらぬ身なりをするようになった。

それだけこの国では芸術は尊ぶべきものであり、男性こそ崇高なものをする価値があった。

何度も女であるがゆえに苦汁をのんできた。

しかし今は女であり、彫刻家として立つことを誇りに思う。

美しいものを創ったという圧倒的な自信がヴィタに前を向かせていた。


「私は彫刻家です。品評会への挑戦でこの場に立っています」

「女が彫刻とは、ずいぶんと鼻を高くしたものだなぁ」


男たちが嘲笑する。


「芸術に女は不要。この至高の行いは女が穢して良いものではない。さっさとお屋敷へ帰りな」

不快に満ちた光景に耐えようとぐっと気持ちを抑え込んだ。