ばあやはヴィタの意地っ張りさに深くため息をつき、やれやれと右手を頬に当てていた。


「お嬢様。彫刻は趣味に留めよ、とあれほど旦那様に言われているではありませんか」

「でも……」

「でも、ではございません!」


ヴィタが成長する様をずっと見てきたばあやにとって、ヴィタの発言はわがままでしかない。


「女が男の真似事など言語道断。出したところで審査対象にもなりませんよ」

「それならあっと言わせるだけよ! ……私が美しいと胸を張って言えるものを知ってほしい」


胸に手を当て語る様は熱心で、情に訴えてくるものがある。


「男女問わず、彫刻は素晴らしいものなんだって証明してみせる!」

「でしたら勉強はサボらない。淑女としてやることは十分にやってから楽しんでください」


頭の痛くなることを言っているのはわかっている。

だが誰に止められたところで、ヴィタの情熱は冷めることがない。


「女の役割をこなしてはじめて主人から自由をいただけるのですよ」


それをばあやは理解しているからこそ、もっともらしく言いくるめようとしてくるのだった。

男性が表舞台に立ち、女は子を産み育てることが求められる。

特に芸術においては男のものという認識が強く、それに手を出すヴィタは反抗的な娘でしかなかった。