それに上書きするようにルークのささやきが響いた。


(愛してごめんなさい……)

……なんて罪は、もういらない。

甘い誘いに答えよう。

愛情を知らない身は甘い誘惑にのまれていく。

ささやく唇にそっと同じものを重ねた。

麗しき天使に恋焦がれ。

届かぬ場所にいるあなたをこの手に掴む。

果実を舐めるは赤い舌。

チロリと這って、甘く誘惑する。

天の使いを惑わすとは、なんと背徳的なことだろう。

それで心は出会った瞬間にとらわれた。

まるでこうなる運命だったと言わんばかりに惹かれていった。

禁じられた種族を超える愛に溺れた。


(甘い。この甘さに私は……。私の願いは……)


指の付け根が熱い。

ヴィタは心臓がルークのものと結びついたのだと強く実感した。


ーーーーーー


城下町の中心に石畳の広場がある。

曇り空の下にいくつもの石像が並び、布をかけて隠されていた。

国民の楽しみと呼ばれる彫刻の品評会は空が灰色だとしても多くの人でにぎわっていた。


品評会に出すと決意し、エントリー。

いつもならば女という理由で確認または拒絶がある。

それでも食いついてやると意気込んでいたが、何の反応もないことに拍子抜け。

とんとん拍子に品評会への出場が決まり、当日を迎えていた。


ヴィタは簡素なガードルで腰回りをしめ、手編みのレースで出来た丸襟のドレスを着る。

膨らみを最小限におさえた衣装は観客として集まる庶民女性と似たものだった。