「……出来た」

そうして完成させた石像を前に、ヴィタは静かに涙を流す。
形に出来なかった最高峰の美しさをこの手で生み出した。

きっとこれは女として生まれたから生み出すことが出来たと誇らしく思う。

「おめでとう、ヴィタ」

「ありがとう。ルークのおかげよ」

「君には僕がこう見えているんだね。……とてもうれしいよ」


この美しさを独占するもの一つだろう。


「あのね。私、この作品を品評会に出そうと思うの」


女でもここまで出来るのだという証明。


「すごく自信があるのよ? あなたのように素晴らしく美しい存在がいるんだって、世の中に知らせたいの」


この原動力はルークに出会って得たもの。

独り占めしたくなるほどの感情こそ、ヴィタが生み出せる最高の芸術だ。

愛しい気持ちは形となり、それに男女は関係ないのだと訴える。


この輝きは、麗しき白い翼は……尊ぶべき愛だ。


(よかった。傷、残ってない)

「ヴィタ」


その声色はまるでチェロのように高音から低温まで滑らかだ。


「少し、外に出ないか?」


真っ白な翼を広げ、沈み始めた太陽を隠して影を濃くする。


「君に見せたいものがあるんだ」

「……うん」


腰に手を回され、ふわりと足元が宙に浮く。

黄昏に染まる世界はどこまでも続いており、好奇心をくすぐられる。

切なささえ抱かせる光の先はいったいどんな光景が待っているのだろう。

圧倒的な自然の美に、心は飽きることを知らなかった。