角砂糖が転がる。

溶けそうに甘い。


(この甘さはなに?)


いや、それはヴィタの考えるべきことではない。

頭がぼぅっとして、ふわふわ浮いた感覚に身をゆだねる。

もっと欲しいと乞うように背伸びをして、濡れた唇に舌を伸ばす。

触れられたり、舐められたりして、敏感に反応して罪を忘れた。

唇が離れたとき、くすぐったくなって額をあわせてクスクスと笑いあった。


「踊ろう、ヴィタ」

「はい」


ドレスの裾をもちお辞儀をすると、ヴィタはルークの肩に頭をのせ夜空を眺める。

誰にも邪魔されない静かな時間にヴィタはすっかり沼にはまっていた。


会場から聞こえてくる音楽を無視し、風のそよぐ音にのってステップを踏む。

闇夜に溶け込む髪を一つにくくり、リズムにのってゆらゆら揺れる。

踊っていると、時々ルークがいたずらに手や頬に唇を寄せてきた。


(もう、いいのね。気持ちに目を反らす必要なんてない)


愛は尊いものだ。

そこに天使も人間も、種族の壁はないのだと夢心地に微笑んだ。


甘いものが欲しい。

角砂糖を舌に転がせばすぐに溶けてしまうので、絶えず求めるほどに魅了されていた。