「ル、ルーク……」

「膝をついて見つめればいい? それとも押し倒してしまえばいいのか?」

「まっ……待って!」

「待たない。待ち続けて、ようやく君の視界に入ったんだ」


ルークが膝をついて、月明かりに照らされてヴィタを見つめる。

ヴィタはうろたえて、瞳に涙をいっぱいにためてルークの肩に触れた。


「やめて! あなたは天の御使い! 私なんかにそんなことをしないで!」

「それが先へ進めない理由?」


舐めるような眼差しにヴィタはポロポロ泣き出して、唇を固く結んでいる。

恥ずかしさのあまり、否定したい感情に縛られた。



「君と同じ位置に立てるならこんなものはいらないよ」


そう言ってルークはヴィタから距離をとると、シュッと手に短刀を出して翼で身体を包む。

何のためらいもなく、ルークは短刀で翼を突き刺した。


「ルークッ!?」


衝撃的な出来事にヴィタは悲鳴をあげる。

赤い血が流れだしてもルークは手を止めず、亀裂は広がっていく。

ヴィタは汗を拭きだし、悲痛に叫んで手を伸ばし、ルークの持つ短刀を叩き落とした。

金属の落ちる音がして、直後にすすり泣く声だけがルークの耳に届く。


「やめて。傷つけないで」

「ヴィタ……」

「私、こわいの。あなたを好きになることが、罪を犯している気持ちになるの」


カタカタと震える指先でルークの手を握る。