晴れやかな空の下で今日も石を叩く音が響く。

色とりどりの花が咲く広い庭に、石造りの重厚感ある屋敷。

神の島とも呼ばれる巨大な島国。

歴史ある伯爵家には一人の令嬢がいた。


「それは光か、影なのか〜……」


清涼な歌声に小鳥たちが呼ばれ、地面に集まって鳴いている。

白金の波打つ長い髪を高く結い、身体のラインに沿った軽装をまとう姿は貴族の令嬢からかけ離れていた。

好奇心旺盛な性格がにじみ出たぱっちりとした目は一切のぶれなく手元に向けられている。

女性は慎ましく、おしとやかに振る舞うことを美徳とする世界で、令嬢ヴィタは異質だった。


ーーガッ、ガッ! カンカンカン!!

ーーバサバサバサ……。


優雅な庭の広がる屋敷にはずいぶんの荒々しい不釣り合いな音。

歌声に惹かれた小鳥たちは驚いて去ってしまう。


「うーん……なにか違うのよね。もっとこう……」


恥じらいなどなく、脚立に足を開いて座り一心不乱に石を彫る。

ヴィタは男の芸術といっても過言ではない彫刻好きであった。


「お嬢様! ヴィタお嬢様!!」


しかしそれは賛同されるものではない。

目尻を吊り上げ、険しい表情をした老婆が脚立の下からヴィタを呼ぶ。

年齢のわりに姿勢の整った女はヴィタ付きの世話役だ。


「げっ……ばあや」

「げっ……ではございません! また勉強を抜け出してそのような道楽を……」

「私は本気よ!」


ばあやの説教に歯向かい、道具を握る手に力が入る。


「次の彫刻品評会に作品を出すんだから!」


ヴィタの目標は”彫刻家として認められる”こと。

だがこの国では女の地位は低く、男と同じ舞台に立つのは恥とされていた。