──── ガラガラ。


教室の扉が開く音がして、見てもいないのに『絢斗が来た』そう思った。ギュッと胸が締め付けられて苦しい……。


「ごめん、ちょっとトイレ」


私は椅子から立ち上がって教室を出ていった。今は絢斗の顔も見たくないし、声も聞きたくない。


「未琴」


後ろから私を呼ぶ声がする……私の大好きな声が。足を止めて立ち止まると、足音が徐々に近付いてくる。


「今日はどうして来なかったの?未琴が来なかったら寝坊した」


──── なによ、それ……。私は絢斗の目覚まし時計か何かだったわけ?


「てか、何も連絡無かったし。連絡くらいしてよ」


・・・・は?自分から連絡すれば良くない?なんで私から連絡しないといけないの?……いっつもそうじゃん。


「未琴、聞いてる?」


後ろから私の腕を掴んだ絢斗の手を強く振り払った。


「未琴……?」

「触んないで」


それだけ言って、私は振り向くことなくその場を去った。そんな私を絢斗が追いかけて来る……はずもないよね。ま、それもそうか。絢斗にとって私は……“ただの目覚まし時計”レベルでしかなかったんだから──。



──── それから私達は口を利くことも、一緒に登下校することも、お互いの家を行き来することもなくなった。