「篠宮さん、覚えてないって顔をしているね」

「ごっ、ごめん……なさい……」

「ハハッ、なんで敬語?それに謝ることはないさ。だって君は俺にとって『高嶺の花』だから──。都合よく覚えてもらっている……なーんてそんなおこがましいことは一切思ってないよ。でもまあ……覚えててくれたら、もっと嬉しかったんだろうなとは思うけどね?」


少しだけ寂しそうに微笑む瀧川くんに、どう声をかけていいか分からない。

私の自惚れだったら恥ずかしいんだけど、さっきからクソデカ感情を向けられているような気がしてならない。

『君のことが好きで好きでたまらない』って、そう言われてるような気がするの──。


「あの日、君と出会ったのは『運命』だって……そう思わずにはいられなかったよ。篠宮さんをひと目見た瞬間、恋に落ちた。俺は君に『恋』をしたんだ。君のことが愛おしくてたまらない──」



曇りなき眼で私を見つめる瀧川くんと視線が絡み合う。

ドクンッ、ドクンッ……と胸が高鳴って、瀧川くんの瞳から目が逸らせない。

私は初めて知った。『愛されている』とは、どういうことかを──。

こんなにも『愛してる』という感情を向けられたことは無かったな。文哉との5年間は一体なんだったんだろう──。本当に馬鹿馬鹿しいなって思ってしまう……瀧川くんのクソデカ感情を目の当たりにしちゃうとね。


「あの時も君は俺を助けようとしてくれた。そして、今日も──。ねえ、篠宮さん、俺のものになってよ。俺だけのものに──」