「ああ……ちなみになんだけど、本名もヤクザだ~ってことも、秘密にしておいてくれるかな?学校側は理事長しか俺の素性知らないから。バレると何かと面倒だし、黙っておいてくれると助かるな。あ、俺ばっかがお願いするのも申し訳ないし……これからは篠宮さんの言うこと、なんっっでも聞いてあげる。だから、いつでも俺を頼ってよ。君は俺が守ってあげる」


ニコッと微笑んで有無を言わさぬ雰囲気。まあ、私は宮腰……瀧川くんに『逆らう』ということはできない。こんな本性を知ってしまったら、逆らう気すら消え失せるよ。


「それは……どうも。宮腰……瀧川くんのことは誰にも言わない。約束する」

「交渉成立かな?ククッ……これは俺達“だけ”の秘密だね」

「……うん。ソウダネ」


とても嬉しそうに微笑んでいる瀧川くんを私はどんな顔で見つめてるんだろう──。多分、ほぼシンデル。

作りたくもなかった二人だけの秘密──── 秘めごとができてしまった。


「ああ、嬉しいなぁ。こうやって篠宮さんと話せる時がようやくきて」

「大袈裟だなぁ……。3年間もクラス一緒だったし、喋ったこともあるじゃん」

「へえ、それは覚えててくれたんだ」


『それは』っていう言い回しがどうにも引っかかる。私、何か忘れてる?


「実はさ、一度会ってるんだよね」

「え?」

「あれは忘れもしない中3の夏──── 君と出会ったんだ」


──── やっっばい。なんっっにも覚えてない。小刻みに震える体、緊張で汗がダラダラ出てきて挙動不審になる私。