「まあ、でも……ああいう時に『宮腰くん』はやっぱり嫌かな」

「え?」

「俺の本名『瀧川』なんだよね」


──── はい?


「宮腰は偽名。本名は瀧川司」


──── 暴露は突然に。


「篠宮さんにはやっぱ本名で呼んでもらいたいなって。宮腰はちょっと、他の男の名前を呼んでるみたいで嫌かな」


3年間、宮腰くんと思っていた人は『瀧川くん』だったらしい──。色々と情報量が多くて頭がパンク寸前なんだけど。

少しばかり状況を整理しようか。えーーっとまず、宮腰くんは宮腰くんじゃなかった。それからーー、全く陰キャではなかった。あとはーー、ヤクザ関係者っぽい。そしてーー、キスが上手い。この4つのことは分かった。


「二人でいる時は本名で呼んでくれると嬉しいな」


満面の笑み……というか、言っちゃあ悪いけどちょっと胡散臭い笑みを浮かべて、とにかくニコニコしている宮腰くん……いや、瀧川くん。


「みやっ、あ……瀧川くんは一体……何者なの?」

「うーーーーん。ただのヤクザ……かな?ハハッ」


笑えねーー。


「まあ、正しくはヤクザの息子って感じだよ。ゆくゆくは俺も~的な感じでさ」



そうですか、それはそれは大層ご立派なこって。家業を継ぐなんて素晴らしいことだよ。

うん……ごめん、マジで関わりたくないかも。だってさ、だってだよ?こーーんなヤクザとは無縁な生活送ってきた女がいきなりヤクザの息子と──……いやいや、ナイナイ。