ヒステリックを起こした時のお母さんみたいに、声を荒らげてしまった私。

 東条くんと対面したままは気まずくて、彼に背を向け小走りで窓際に。


 旧校舎の窓から、悲しそうに揺れる木々を見つめてみた。

 東条くんは何も言葉を漏らさなない。

 もちろん私も。

 音楽室は静まり返ったまま。


 長い沈黙を破ったのは、東条くんの辛そうな声だった。


「これだけは誤解するな。俺が歌夜に惚れたのは、オマエがオメガだと知る前だ」

「えっ?」

「歌夜のオメガフェロモンに引き寄せられた他のアルファ達と俺は、明らかに違う」

「それって……」


 その話をもっと深く知りたい私。

 目を見開きながらも振り返る。
 
 でも一番聞きたい質問は、私の口から飛び出そうとはしてくれない。


「歌夜をほかの奴に取られたくなくて、俺の番にしたいと焦りすぎた。悪かった、反省してる」