一瞬の出来事だった。

 バックハグをされたまま、後ろから奪われるようなキス。


 唇同士が重なっていたのは、瞬きほどの短時間で。

 今はもう、私の唇を覆っているのは空中に漂う空気のみ。

 唇は解放されているけれど、今度は私の右肩がくすぐったい。


 東条くんは私の肩におでこをコトり。

 「オメガのキス……中毒性ありすぎなんだけど……」

 自信過剰な総長様とは思えないほどの、弱弱しい声を震わせている。


 東条くんは今、キスって言ったよね?

 やっぱり私、キスされたんだ。


 一瞬だった。

 夢と言われれば納得できるくらい。


 でも唇に沈み込んだザラつく感触が、頭から離れない。

 ワイルドさと甘さが混ざり合った吐息が忘れられなくて、まだ私の唇を惑わしイジメてくる。