「ほんと重症なんだな」
私の隣に立つ東条くんは、額に手を当てはぁっと重い溜息を吐き出すと
ネクタイとえりの隙間に指を差し込み、キュキュッと結び目を緩めだした。
今さら気がついたけど、そもそも珍しい。
東条くんがネクタイをしているなんて。
普段の彼はノーネクタイ派。
『制服はちゃんと着ろ。服装を乱すな!』
一つ年下のなのに東条くんにタメ口で吠える風紀委員くんに、よく注意されていて。
総長様は、余裕の笑みを浮かべながら風紀委員君をスルー。
暴走族仲間を引き連れて、ズカズカと校舎の中に入っていっちゃうのが朝の風物詩なんだけど。
……って、今は東条くんの制服事情なんてどうでもいい。
なっ、なんか怖い。
東条くんはほどいたネクタイを、両手でピンと伸ばしている。
ワルっぽく微笑みながら、椅子に座る私を見おろしていて……
こういうダークな表情の人、どこかで見たような……
あっ!