冷静にならなきゃと自分に暗示をかけようとしても、術は一向にかからなくて。

 目の前の東条くんを瞳に映すだけで

 ――見つめるの無理。

 ハートに甘い痛みが走ってしまうんだ。



 これは……恋?



 私の初恋?

 東条くんのこと、好きになっちゃったの?


 違う違う、そんなんじゃない。

 絶対に違う。

 フェロモンのせい。


 だって私はオメガ。

 アルファのフェロモンに惑わされてしまう性質を、生まれながら持っている。

 悪っぽく微笑みながら「俺に甘えろ」なんて囁かれたせい。

 恋に似たドギマギに、私は襲われてしまい……

 お互いのフェロモンが、恋の幻想を見せ合いっこしているだけなんだ。