「ったく、世話のかかる女」


 あの……えっと……

 暴走族の総長様というものは、相手の拒絶をスルーする強引さがないと務まらないのでしょうか?


 窓枠に座ったまま、彼は私の手をガシり。

 掴んできたと思ったら……

 今度はもう一つの手で、私の腰をホールドするように絡ませてきて。


 宙に浮いた私の体。

 強力な引力には抗えず……

「きゃっ!」

 私は体ごと、東条くんの胸に飛び込んでしまったのです。


 ……っ。

 こんなの不可抗力だよ。

 窓枠に座る東条くんの力強い腕で、ギューッと抱きしめられてるよ。

 私のほっぺが東条くんの心臓に押し当てられていて、東条くんの心音が余計に私の心臓をまどわせてるからほんと無理。


「で、どうする?」

「どうするって?」

「歌夜が旧校舎に入るのを拒むなら、誰かに見つかるまで歌夜を抱きしめ続ける」

「このままってこと?」

「生徒一人に見られたら全校生徒の耳に入るだろうな」

「ん?」

「俺たちが授業をさぼって、旧校舎で抱き合ってたって」