『私、知ってたよ、好きな人いてずっとその人と付き合ってたこと』


これは俺がしくんだ作戦


同じサークルの先輩に事情を話してそう見えるようにしてもらった


『なんでそんなことすんの?あんたたち喧嘩したわけでもなさそうだし仲良いんでしょ?』


呆れたようにそして怒ったようにそう言う先輩に何度もお願いして引き受けてもらった


『気乗りなんてしないわよ、あたしの手で一組のカップルが破局することになるんだから』


そう言いながらも先輩は彼女のふりをしてくれた



『最後にこれだけ聞かせて?』

少し震えた声で君は続ける

『私のこと好きだったことある?告白したのも私だし…』


君の表情は影が邪魔をして上手く見えない


俺はまた作られた言葉を探す


『…、ちゃんと好きだったよ』

こう言えばどちらとも受け取れるだろう


『そっか、ありがと、私も、』

『好きだったよ。』

君が口にした過去形の言葉

これが作られた言葉なのか本心なのかは分からない


『じゃあ、バイバイ、今まで私と付き合ってくれてありがとう、そしてごめん』

泣きそうに潤んだ瞳がスッと俺を見つめる