「希空、嬉しそうな顔してるね。で? 海斗くんのほうはどうなの?」
「ぶっ!」
香澄ちゃんに聞かれて、私は口の中にあったウインナーを吹き出しそうになってしまった。
「なっ、な、なんで相楽くんの名前が出てくるの?!」
「あれ? ふたりは仲良いんじゃなかったの?」
「なっ、仲良くなんかないよ」
チラッと相楽くんのほうに目をやると、彼は教室の窓際でパンを食べている。
「キャー、海斗くーん」
「パン食べてる姿もかっこいい〜」
食事中でもファンの子にキャーキャー言われていて、ちょっと迷惑そう。
ていうか相楽くんは、出席番号順でたまたま席が私の後ろってだけなのに。
香澄ちゃん、私たちの一体どこを見て仲良いだなんて思ったの?
そもそも相楽くんが一方的に、私にちょっかいをかけに来てるんだよ。
「希空もあの人気者の相楽兄弟の弟に気に入られて、良いじゃん」
「良くないよ! ていうか、そもそも私のどこが気に入られてるの? 嫌われてるの間違いじゃない?」
この前だって『ポニーテールにするの禁止な』って、訳の分からないことを言われたし。
私は、おろしたままのストレートの髪にそっと手を当てた。