皆の優しさに触れたお陰もあってか,翌日の私は少しだけ元気を取り戻していた。
身支度を手短に済ませて,1人で外に出掛ける。
癖で1度早起きをしてしまったけど,二度寝の甲斐あって,時計はもう10時を回っていた。
寝癖が気になるけど,これから会いに行く人は,そんなことを気にする人じゃない。
カランからんと軽やかな音で扉を開くと,ふわりと温かい珈琲の香りがする。
「はぁい,いらっしゃい。……おや,エヴァちゃんじゃないか,久しぶりだね,元気かい?」
「私は元気だよレナルドおじさん。おじさんはどう?」
「はは。ワシも元気じゃよ。人間元気なのが1番じゃからの。これからも気を付けるんじゃぞ」
目元を緩めるおじさんに,私は1つ頷いた。
レナルド·ウィルキンソンさん。
もう知り合って随分経つ,数少ない仲良しさんだ。
「突然来てごめんねレナルドおじさん。今日は少し話がしたくて来たの」
おへその辺りで自分の手をぎゅっと握る。
レナルドおじさんは目を見開いて,私を正面に捉えた。