「少しは正直になりなさいよ」

「うるさいな,怒るよベッキー」



そんな会話を耳に聞くなかで,ダニ-は腰を重そうにして立ち上がる。



「いつまでも鬱陶しい。あのねぇノア,そんなんじゃこのまま」

「聞こえなかったのかな,僕は"黙れ"って……エヴィー?」



ふわりと空気の変わったノアが,ダニ-に手を借り立ち上がる私に向いた。

学校で王子のフェロモンと呼ばれているらしいその振る舞いは,大きく分けて2つの時に現れる。

とてつもなく怒っている時。

そして……誰よりも他人を甘やかす時。

そっと,空気のように優しく,ノアが私に近づいてきた。

その時には私も自立できるようになっていて,静かに向き合う。

持ち上げられた手が私に向かってきたけれど,ノアは私に触れる一歩手前で止まって,私の顔を真剣な表情で注視した。



「ノア?」