「いいんじゃない。その頃にはもう,私の教えることもなくなってエヴィーの生活も落ち着くはずよ」
「え……それは」
戸惑うエヴィーの声にはっとする。
(いけない。もう少し別の言い方をするべきだった)
大丈夫。
この寂しさは,巣だつ我が子を思うようなもの。
(もうすぐ"25"になる女の,妹離れみたいなもの)
エヴィーの落ち着いた声が,情けない師匠の背を撫でる。
「それは,寂しいわ師匠。大好きなのよ,エルさん。教わることがなくなっても,話を聞いて欲しい。私の成果を定期的に見て欲しい。ねぇ,会いに来てもいいでしょう?」
「ええ。もちろんよ。こんな山奥にまであなたが来ると言うなら,止めたりしないわ」