「なら,私の弟子として発現調節の訓練が必要ね。でも……何か気が逸れるような事があったんじゃないの? どうして敗けたのにそんなに嬉しそうなのかしら?」
「え,えへへ。あのね,実はその勝負,勝った方の言うことを聞くルールだったの。だから,本気は本気だったんだけど,一瞬……つい」
「どっちでもおいしいとか思っちゃったわけね? 私の可愛い弟子は。ダニーも中々策士だこと」
「もう。エルさんのいじわる。ダニーはそんなずるいこと考えないわよ。いつも私のわがままばっかり聞いて貰ってるから,聞いてみたいなと思ってしまっただけ!」
ツンとした声と裏腹に,頬は可愛らしく染まっている。
(今の若い子はそんな可愛らしいゲームをするのね)
「はいはい。その結果がデートだなんて……良かったわね,エヴィー」
どうやら,今日は最初から惚気たいだけだったみたい。
「……うん。私,最近いつも思うの。私のわがままであまり会えないのに,それでいいって大事にしてくれる」
エヴィーの打ち明ける思いは,私の目に,全てが宝物のように映った。
綺麗で,美しくて。