「少し,休むわ。今日はもう」
「帰らないよ。大丈夫,ひとりじゃないから」
力強い,たんぽぽみたいな女の子。
(ううん。もう立派に,女性かしら)
少なくとも,その頃の私に比べれば,よっぽど。
「師匠命令よ。ちゃんと,私がどんな状況でも……夕暮れ前には余裕を持って帰りなさい」
少し生気のある声で告げれは,ややあって。
エヴィーは悔しそうに返事をした。
身内に心配をかけるわけにはいかないと,物わかりのいいエヴィーは耐えていた。
その姿勢は,違う意味で私のためになる。
(いつか,その意味を知るでしょう)
私からの師匠命令は,言わば。
私達の明日を保証するものだった。
理性を,感情が裏切る瞬間を。
自覚すればするほど,反抗する理性に胸が軋む。
私はまだ,それでもエヴィーの師匠でいたい。