「エルさん,大丈夫? まだどこか悪いの……? ううん,何かあった? 良かったら私にはなして。師匠の話くらい聞けるのが弟子でしょう?」
「なんでもない。なんでもないわエヴィー」
ぽろりと浮き出た雫がひとつ,ツゥ……と頬を伝う。
「なんでもなくなんて……今のエルさん,昔一度だけ見た,精神を患ったおじいさんみたい……心配するに決まってる」
「……エヴィー。ごめんなさい,ごめんね」
(あなたはこんなにも,希望を詰め込んだような人なのに)
「どうして謝るの。私,すごく助けられてるのに」
何も答えることが出来ない。
エヴィーの手も,声も,きっと心でさえ温かくて。
力を込めなくても,ぎゅっと握ってくれることに安心して。