『どうしてそこまで,ハリー』



もう二度と口を聞けないようにしてやると,部屋には静寂だけが残った。



『もう,帰って。2度と来ないで』



王弟を連れてきたその人は,唯一の生還者。

今何をしているのかは知らないけど,約束は守ってくれているらしい。

捕らわれている親族だけでも救出しようと試みたけれど,情報を手にしたときには,ううん,王弟が私のもとに到着していたときには。

全て等しく,命を奪われていた。

天涯孤独。

私は,魔導師を目指した魔法学生から,魔女と名乗ることに決めた。

この国の人間なんかと,同じ名乗り方をしたくなかった。

それでも拭えぬ感情がある。



『わたしの,せいで』



あの時の悲しみを,きっと私はエヴィーを手離す惜しみに重ねているのだとおもった。