「エルさん,辛い? 何か欲しいもの……」



視界がぼやける。

少しはなれた壁にもたれて,エヴィーの顔が私と同じ高さにあった。

直ぐに気付けるように,私のためにずっとそこに座っていたのだろう。



(エヴィー,そこ。私が初めて自分の意思で殺めた人が,追い詰められてへたりこんでた場所よ)



昔の夢を見て,まだ頭が回らない。

限りなく少ない理性が働いたお陰で,私がそれを口にすることはなかった。



「エルさん?」



そこに手をついて,私よりふた回りも年上の大人が,死んでいったの。

私の命を,脅かしたから。

誰の所有地かも分からない森に家を建てて,半年の月日がながれ。

なんとか暮らしに順応し始めたそんな時。

私のもとに,2人の強盗がやって来た。

初めは森に居を構える女の情報をどこからか聞き付けてきたのだと思っていたけど。

それだけでないことは程なくして分かった。