『あの,お父さん……お金なんだけど』

『ああ?!』

『ひっ』



あるよ。

そう口にしようとしていた。

それで解決する話だと思えば,出ていくのも怖くなかった。

実際,お金ならあったのだ。

新しい文明,新しい教育の道。

大きなプロジェクトの発表とともに高校生活を締めるはずだった私は,研究の成果を称える褒賞金が国から貰えることになっていて。

生活に困っているだなんて思わなかったから,直ぐに伝えなかったけれど。

確実に受け取ってから全額両親に渡そうと,ずっと前から思っていた。

魔法は勇気まで発現させたりしない。

目の前に立ちはしたものの,父に凄まれた私は,それを言いきることが出来なかった。