「僕は……ずっと,城の中に幽閉されていた。国民には病気だと偽られて。君の才能に怯えて,君が王妃になるのを恐れて,君の命を狙ったのは……王だ」



(駄目な国で,気付けない駄目な僕で,助けられなくて,ごめん……君は,何も悪くない。君の殺めた命は,全て僕の罪で,君を狙った彼ら自身の罪だ)

国を滅ぼすことすらしなかった,アリーのせいじゃない。



「う,そよ,だって」



(誰に何を聞かされて)



僕が裏切るなんて,ちょっとやそっとじゃ信じないはずだ。

どんなに弱っていても,それくらい僕は僕のことをアリーに打ち明けていた。



「一緒に,ミス クレアも閉じ込められたんだ。僕のことが信じられなくても,彼女の言葉なら信じてくれるだろう? 後日連れてきたっていい。僕は君が,この世で一番大切なんだよ」



喉に,緩くなった鼻水が落ちていく。

情けなくてもいい。

もうとっくに大人なくせして泣き虫だと,そう思われたって,いい。

僕を見て欲しい,誰かに植え付けられた僕じゃなくて。

アリー,戻ってきて。

怖いものは,もう,ないから。