「私だって,1度くらい思い切り抱きついてみたかった! 抱き締められて,安心してみたかった……!!!! でも……無理だったのよ」



アリーが,僕を見ない。

言い募る言葉が,何を示しているのか分からない。

分かるのは,あの頃確かに両思いだったと言うことだけ。

懺悔するような,恥じるような,分の悪い言い訳をするような。

僕はなぜ僕にそんな態度をとるのか分からなかった。

"無理だった"の言葉の答えが,直ぐにアリーによってもたらされる。



「父親に売られ,人身売買の男達を殺してしまった。圧倒的な,私の味方であったはずのこの魔法で。
あなたは,そんな私を許さない。何より,私が許せない!!!!! だから,行けなかった。どうせ,間に合わなかった。……それでもなお,どうしてあなたは私を恨むの。あなたの言葉を聞かなかったことが,そんなに悪いこと? 彼らを手にかけたことよりも? 殺したいと,何年もかけて,恨むほど……?」



1日だけ,アリーの言葉によって彷彿とする日があった。

僕がプロポーズを考え,失敗し,父王との賭けにも負けてしまった日。

あの日,本当は来なかったんじゃなくて……



(来れなかった? そして,来ようとして,受け入れてくれようとしていた……?)



僕は,馬鹿だ。

アリーが何年も抱えていた気持ちを,今日まで聞けなかった。

会いに来れなくて,他の重要な可能性を一切考えなかった。

僕が,不自由でも恩師と共に安全な場所で過ごしている間に,アリーは……



「答えて,ハリー~っ」