「ハリー」



悲しみを帯びた声が,僕を呼ぶ。

何度も,頭の奥を貫いては,所詮幻影だと僕を切なくさせた声。



「あなたが,来るとは思わなかった。私が壁をたててから静かになったのは,面倒だからじゃなくて……その子達を育て訪れるこの日のためだったのね」



(何を,言ってるんだ……? 勇者パーティーの子達を連れて来て,誤解しているのはまだ分かる。でもその言い方じゃまるで)

ダニエル達がいようがいまいが,最初から僕が何かをしていたみたいじゃないか……?

壁が出来たのは数年前だと聞いている。

僕はその頃,アリーが壁をたてたことすら知らなかったのに。



「私だって,私だってね……あなたに,すきだといいたかった」



ぽつりと,涙声が届いた。

アリーの,震えた心に,僕は聞き間違いかとすら思う。

声を滲ませながら,それでもまだ溢れないその一粒を,僕は見たい。

我慢しなくていいから,僕の前で,強がらなくていいから。

下じゃなくて,僕を見て。



(僕はアリーの本音だけが知りたくて,ここに来たんだ。君が何を考えているのか,ただそれだけなのに)