どこが,魔女。

ただ奪われ続けて,失って,自分の手でまで奪ってしまっただけの,人。

僕の胸まで痛む"アリエル·アーシア"さんからの最上級の賛辞に,僕は口を閉ざした。

もし,仮にそうだとしても。

それでもエヴィーが選んだのはダニーだ。

ダニーでしかあり得ない。

だから,アリエルさんは今も苦痛に顔を歪めている。

分かっているんだ,きっと。

分かっていても,抗うしかない程,アリエルさんの周りには不条理が溢れている。

こんな結果,誰も幸せに出来ない。



「帰ります。捕らわれた人を,救いに行かなくちゃいけないから」



エルヴィスさん。

時間がかかってしまってすみません。

エヴィーの帰る場所を,守る必要が無くなってしまった。

すこし強引になるかもしれないけど,命を懸けて貰わなくちゃいけないかもしれないけど。



(あなた1人の命くらいは,守れます。もしそこの方が安全だったとしても。エヴィーのために出てきてください)



そのために,あの日。

エヴィーはたった1人で飛び出したんだから。

僕たちの,せいで。

だから,もう目の前のこの人を脅かすことなく,立ち去るべきだ。



(ハリエルさまの用事が,終わった後で)