「あの子にさえ見られていなければ,本当に無かったことになるとでも? それでもまだあの子の友達を名乗れると? 返して欲しい? 返せないものを奪ったのは,あなたも同じ。良くもそんなことを,都合のいいことを,言わないでっっっ!!!!」
「ぁ……いや……やだ…………ごめん……ごめんなさい,ごめんなさい……!! エヴィ……~!!!!」
動けないまま,抵抗ひとつ見せることなく。
ベッキーは頭を抱えてしゃくり始めた。
(何を言っているのか,ちっとも分からない)
僕はもう一人の存在をようやく思い出す。
(どうして,ダニーは何も言わないんだ?)
ずっと,物音ひとつしない。
それが僕と同じように,動けないだけだとは思えなかった。
振り返ると,小さく口があき,ベッキーと同じように青ざめるダニーがいる。
(まさか)
浮かんだ仮説は,間違いであれば到底許されない,汚いものだった。
女性の言葉と,崩れかけていた関係が一本の線として繋がっていく。
2人がおかしかったのは,エヴィーが欠けて,欠け続けていたからじゃない。
ベッキー"と"ダニーの裏切り,それは