(まるで,ベッキーがエヴィーに背いて,裏切ったかのような)



そんなはずはない。

エヴィーが出ていくまで,何かトラブルがあったなんて事はないと思う。

エヴィーがいなくなったのは,エルヴィスさんの事があったからだ。

その後だって,そもそもエヴィーは1度も戻ってきていない。

1秒だってそんな瞬間があったなら,気付かないはずないんだ。

ずっと,僕たちがベッキーの近くで生活していたんだから。

そんな隅々まで,女性の断定的な言葉によって巡らせてしまう。

自分すら信じられなくなった。

彼女の言葉の意味を探るために,ベッキーを見る。

組敷かれるベッキーは困惑し,そして何か思い当たる事でもあったのか,ゆっくりと青ざめた。

森の女性を伺うようなその視線に,僕は誰のために動けばいいのかも分からない。

数年越しに僕達に向けられる全ての感情の理由が,彼女の口から明かされる。



「エヴィの愛を裏切ったあなたに,エヴィーから奪ったあなたに! あの子を渡せるわけなんか,無いでしょう」



唸るように,ベッキーは睨み付けられた。

抑えられた激情を前に,ベッキーは恐怖していた。

"全て,知られている"

そう,ベッキーが小さくなる。