「エヴィーを……」
ベッキーの涙声が,響く。
言葉を紡ぐその様子を,女性は手を出さずに見下ろしていた。
どうしてあんなにも,彼女は静かに佇んでいるのか。
幽霊と接しているようにすら感じて,僕は不審に思う。
僕たちはなにか,森の女性と言う人物について,重要な事を知らないのではないかと,そんな恐怖に襲われた。
「返してよ……っっっ」
ずっと閉まっていた気持ちが,自らを危険に晒されながらも爆発する。
聞き終えて,なおも微動だにしない女性は,ようやく口を開いた。
「そう。返して欲しいの? その資格が,あなたにある?」
「な,にを」
女性には,僕なんて眼中にない。
あくまで,何故かベッキー個人へと資格を問うている。
「あるに,決まってんでしょ……っ!! あの子はあなたを信じていたのに,一方的に私達から奪って……もう,帰ってなんか……あなたのせいで!!!!」
「"あなたのことも",信じていたでしょうね!!」
抑圧するような,怒り。
それほど大きくない声量でありながら,彼女の言葉は僕たちを圧倒した。