「もう,どこにもいないわ。私が,殺してしまったもの」



固く冷たい声色は,一瞬震えて。

嘘をついている震えではなく,僕には,そこに後悔が滲んでいるような気がした。



何度も,打ち消した可能性が,今単なる事実へと変わる。

せめて,近くに行きたい。

森の女性を,魔女と呼ぶべきなのか。

彼女から,弁明を聞きたい。

エヴィー,君になにがあったのか。

君を,取り戻したいと。

ただその2つだけを求めてここまで来たんだ。

どうして,そんなところで,そんなことになってるんだよ。



「ふざけるなッ……ッ!!!!!!」



強い,獣のような怒声。

呆然として,ダニーのそんなものすら制止することが出来ない。

当然だ。

もう,どうすることが正しいかなんて分からない。

ダニーが1人で勝てるはずないと分かるのに,それでも動けない。

走り出したダニーが,魔法で近づこうとしても,全てがスローに見えた。

そしてそのスローモーションを切り裂くように,勢い良く森の女性がダニー目掛けて落ちてくる。

文字通り,彼女は魔法も道具も一切なく,ただ身を投げてきていた。

驚きながらも勢いそのまま引かないダニーと,ひたすら冷静な表情の彼女が面を合わせる。