「知りませんか」
どうか。
その願いに彼女は無言を貫く。
そしてぼわりと炎を発現させた。
皆の緊張を感じる。
それでも,まだだと瞳だけでコンタクトをとり,彼女の動きを見つめた。
ゆっくりと見せつけるように,今度は反対の手で何かを発現させる。
その何かは炎に溶かされながら部屋の奥へと向かっていく。
女性が炎の発現をやめると,それは硬化し。
繋がった先を見つめる,表情の見えない女性は固まった魔法を引き寄せた。
ずりずりと,何かが僕達に見えるように引き摺られて出てくる。
女性の身長ほどの箱だ。
透明な板で閉じられた箱。
女性は箱を傾け,中身を僕達に晒した。
「……ここよ」
すぅと息を吸って強く聞かされた言葉に,全員が顔を強ばらせ,喉をならす。
中にあったのは,エヴィーの姿だった。
数年の時があったとは思えないほど,あの時と変わらない姿のエヴィがそこにいた。
「エヴィーは」
だから,眠らされているだけなんじゃないかと思った。
人は必ず腐敗するから。
ずっとそのままでいることなんて,不可能だから。
それを言ってしまえば,まだ成長途中のエヴィーが変わっていないことすら矛盾になってしまうけれど。
少しの希望にすがった僕を真っ直ぐに見下ろして,彼女告げたのは,絶望だけ。