「おかしいな。だとしたら森が自然すぎる」
「どう言う意味ですか?」
「彼女には,森に媒体を設置することで侵入者が来ている様子を遠くから観ることも,音声で気付く仕組みを作ることも可能なんだよ」
僕達にはハリエルさまが何を言ってるのか,良く分からなかった。
けれど確かに,何かに違和感を持っていることだけは分かる。
「だけどそもそもその媒体が見えない。なのに僕達の動きが分かるって言うのは」
そこまで言って,ハリエルさまは動きを止めた。
ごそごそと,木の葉を掻き分ける。
「何してるんですか?」
僕も近寄ってみると,今度は手でそれを制す。
不審に思ったベッキーやダニエルは,僕の後ろからそれを覗いた。
「……これだよ。彼女がこんな方法を選ぶとは思わなかったけど」
ベッキーたちはその手元を注視していたけど,僕はそういうハリエルさまの声色に違和感を抱いてその顔を見る。
必死に隠しているけれど,どこか嬉しそうに見えた。
改めてみたその手元には,細い透明の糸のような物が見える。