『王族の結婚相手は代々父王が決めてきた。それを押し退けて"アリエル·アーシア"を后にと求めるのであれば,相応であろう』



その時。

父王は何かを隠した,動揺した瞳で,僕を冷たく見下ろしていた。



『アーシア嬢の様な賢女がお前のプロポーズを受けるなら,私もお前達の結婚を許す。ただし,もし彼女が断ればそのときは……』

ーお前には私が許可を出すまで,自室で魔法の研究と実務だけを行ってもらう。外に出ることは決して許さない。国のために,誰よりも賢く強い王を目指すのだ。



そして僕は,その賭けに負けた。

彼女は,"アリー"は僕の呼び出しに応えなかった。

どれだけ待っても,来てはくれなくて。

日付が変わるのと同時,僕は外すら見えない,自力で脱出することも出来ない部屋に閉じ込められたのだ。



ー今日の夜,外で逢える? アリーに伝えたいことがあるんだー



甘く疼く。

アリーは確かにうんと短く返事をくれたのに。

その意味を後で知って,拒絶したのだろうか。

アリーは約束の場所に来なかった。

意味もなくそんなことをする人じゃないのは分かってる。

だからきっと,それが答えなのだと納得したはずなのに。

今もまだ,彼女からの答えを欲してやまない。