ダニーの望む反対の魔法を発現させる。
驚くベッキーの目の前で,ダニーはカクンと膝をおり,地面についた。
両手をだらんと垂らし,前方へと倒れるダニーの頭に,僕は自分の足を滑り込ませる。
シンとした空気の中,言葉を選び困惑するベッキーの視線だけが背中に刺さった。
「ベッキー。僕達は彼女には敵わない。話し合いの余地があるのだとしても,それはきっと今じゃない。話し合いの席に着いて貰うだけの力を,僕達もつけなくちゃいけないんだ」
「え,ええ」
僕の切実な気迫に,ベッキーは頷くしかないように見えた。
言いながら,僕も分かってる。
(今の発言は,前提にエヴィー失踪とあの人に関わりがあると言うものがある。なのに,だけど僕は,身近な場所でエヴィーを探す方を選ぶしかない)
少ない可能性の中,健気にエヴィーの無事を祈りながら。
ダニーはヒーローみたいなやつで,僕はきっとモブにしかなれない。
ダニーは僕とは違って,敵わないと分かっていても,エヴィーの元に迷わず駆けつけようとする。
せめて連れ出そうと考えられる。